平成11年春、事の起りはこんなふうだった。 先生への手紙のなかにある。
三輪 茂雄  先生                 平成11年6月18日 
先般はご無理をお願いし、遠路はるばる当地までお越し下さいまして本当にありがとうございました。
当日、石臼の目立てのレクチャーは大好評で、参加者全員が感激いたしました。
「目立てとはそういう意味だったのか!」
 さて、当日を振り返って思うことがあります。それは素人の方のパワーです。
それは私ども粉屋には思いもつかないことでした。
一人の素人の方(渡部さん、趣味で手打ちをされ、同好の士と共に会を組織、月一度活動されている。)
が榎本さんが書かれた日経の新聞記事を見て、早速電話されました。またそれを聞いた榎本さんも気持ち
よくコーディネイト役を引き受けられ、先生の石臼の目立ての講習会が実現できました。
 最近、粉屋にそば粉を直接買いに来られる素人のお客がふえました。
ブームとはいわないまでも、随分そばに関心のある方が多いというのを実感いたします。
そんな方のなかにはそば粉ではなく、原料の玄ソバを買いに来られる方がでてきました。
手打ちだけにとどまらず、自分で粉にまでしてしまう。おそらく、そば好きの先端にいる人達といえるでしょう。
 私共にとってそんな方達との交流は、新鮮で刺激的です。そば好きの視線がどんなものかを強く感じるからです。
プロのそば屋さんが考えるおいしいそばと、彼らの考えるおいしいそばとの間に随分乖離があるのを感じます。
そんなことを知ることで、粉屋もまたがんばろうとします。
 さて先生が帰られた後、話は盛り上がりました。今度は各自の石臼で挽いたそば粉を持ち寄って、粉自慢しよう、
そして自分たちがつくった粉で打ったそばを是非先生に食べていただきたい。
当日参加された方から是非先生にお願いしてくださいとの伝言です。
  
平成11年4月3日 土曜日
石臼の目立てとは目をつけることだと、またその技術は臼の曲面処理にあると考えていた。
しかし、先生の説明は違った

三輪先生が手本を示される。
「大胆にかつ慎重に」。

全員の目が先生の手元に集中する。
プロトコルどおりその手順を反復してみようと。

藤友さんは誰にも譲らず、一人たたき作業を楽しんでいる。

榎本さん。(榎本薬品株 社長)
石臼の精度を云々すれば、抹茶臼にいきつく。臼の目の数を末広がりの88本にした。
縁起をかついで、松、竹、梅を使って、心木、挽き手、挽き手を被うカバーを自作された。

因みに一字に人間の煩悩が表現される。
茶の漢字を分解すれば、草冠は十がふたつ、草冠の下は八十八と読める。あわせて百八になる。

理論派の楠木さんが質問する。
「先生、では溝の意味は」
エクリチュールの混乱。

予定調和の瞬間がある。

臼のレベルが何度も何度も計られる。
それは上下の擦り合わせ面をきっちりとだすという作業でもある。

試し挽き
前後するが、まず上下の臼の全面に黄色と青色のチョークをつけて空挽きしてみる。
色の重なり具合で擦り合わせ部分が確認できる。写真上臼部分に青色のチョークの色がみえる。

擦り合わせ面の確認。
外周部分で粉は完全に挽けている。

目立て修正後の上臼
白く削られた部分が目立て修正箇所。

同 下臼。
信じられないだろうが、この石臼は実に軽快にまわり、規則的にきれいな粉を臼から排出する。

先生を囲み参加者一同で記念撮影。

 三輪 茂雄  先生                 平成11年7月5日      
 
 当日参加されたそば好きのみなさんは各自、自分達の石臼をお持ちです。当日の印象は強烈でした。
そんなことから自分で目立てをやってみると何人かは早速道具を調達されました。
実はそれからの後日談です。
参加されたみなさんからの素朴な疑問です。目立てでレベルをとるという意味は理解したとして、では臼に刻んだ
溝にどんな意味があるのか。我々みんながそうでした。あまりに目立ての解釈に興奮してしまい、それ以上のこと
は考えつかなかった。
 そして話はここから始まります。
ご存じの通り当社に臼が20組ほどあります。そして誰からと言うことはなしそれを使って一度目をおとし、新たに
溝を掘ってみたらどうか。そしてこの話は盛り上がりました。「やってみよう」。
さっそく渡部さんを中心に4人が名乗りをあげました。
 アイデアが次の行動を催促します。お誘いの手打ちそばはそんなことからのアイデアでした。
是非その石臼で挽いた粉で打ってみよう。時期は新ソバが出回り、安定した頃、12月の上旬を考えました。
その時にはご連絡いたしますので是非お越し下さい。
それまでには何組かの石臼を完成させたいと考えております。作業は8月の盆明けあたりからを予定しています。
唯、志を高くもっていますが、なにぶん初心者の集まりです。
まず最初の一歩は楽しみながらやっていこうと考えております。