帰ってくるんだぞ


そんなにそば打ちが好きなら、うちの畑でソバをつくってやろう。
 
ただし、刈り取りの時には必ず帰って来るんだぞ。いいか、良二、約束したぞ」。
必ず帰って来るんだぞは新鮮で印象的でした。
以下、Yさんの話は次のようなものでした。

「そのことはいつも気にしていました。ええ、故郷を忘れることはありません。正直、毎日の
仕事の煩雑さにかまけて、ちょっとこれではいけないなと感じていたところでした。
そんな時の親父からの一言でした」。
「ようし、帰ってみよう」。


平成13年11月10日 約束の日。彼の故郷は鹿児島薩摩郡樋脇(ひわき)町。


「おかえり」という言葉より先に親父の口をついて出てきた言葉は「畑に行くぞ」でした。


ソバ畑のほうは、私が帰る前に一部収穫していました。収穫したソバを水に浸けます。
水に浮いた未熟のものは除去し、重く沈んだものだけを選別します。
畑の広さは一反のちょうど半分、五畝程の広さです。種は叔母から融通してもらいました。
鹿屋在来といって、小粒ですが味があるといわれます。
幸いに台風、霜にも遭わず刈り取りを迎えることができました。


畑といいましたが、休耕田です。家は農家ですから、そのへんは承知しています。
田圃は水はけがいいように改良されていましたし、客土もしていました。山の土をです。



父と母をうつしました。レンズのむこうに私がいます。


「はやく種を返さねばいかん」貸借関係は身内であろうが、はっきりさせておく。
昔気質の親父そのままの台詞です。
ブルーシートに広げて、秋の陽を追いかけるようにして、影になれば、シートを移動します。
収穫は35Kg程ありました。

久しぶりの故郷、まわりの景色は一変しています。
でもそんななか、見慣れた風景にであっったとき、ほっとするような安らぎをおぼえます。
うれしかった。これを機に来年も帰ってみようとおもいます。